2021秋の逃避行 ~雲ノ平周回 Day.2 北ノ俣岳・黒部五郎岳~
少し長めのお休みが確保できたので、長年計画してきた「雲ノ平周回」を実行してきました!!
折立~薬師岳~黒部五郎岳~鷲羽岳~水晶岳~雲ノ平をめぐって折立に戻る、総延長55km、累積標高差4,770mにも及ぶ、3泊4日の山旅であります♪
今回はその2日目、薬師峠キャンプ場~北ノ俣岳~黒部五郎岳~三俣蓮華岳キャンプ場をご紹介します。
薬師峠キャンプ場(5:39)~北ノ俣岳(8:32)
かなり冷え込んだ2日目の朝はテントがバリバリに凍るほど。ナンガのシェラフのおかげで寒くはないのだけど、テントの片づけが超面倒くさい。まだ周りも寝静まっているのであまり音は立てたくはないけど、かといってフライシートにこびり付いた霜をグローブでガリガリ落とさないと片づけにくくもある。そんなことをブツブツと文句言いながら、でも今日は一番長い行程(想定12時間)なのでさっさと支度せねば…と作業するのです。
そんなこんなで、ホントは日の出前には出発して太郎山あたりでご来光を…なんてつもりでしたが1時間ほど遅れて出発。太郎平小屋のあたりで朝日を浴びてしまいました。
北ノ俣岳はとてもなだらかな山で、故に遠くから見るとピークの位置を見誤ります。太郎兵衛平からずっとピークだと思って頑張ってきた2570mあたりにたどり着くと、真のピークへの道がドーンと現れて、朝から腰砕けにになりました。標準タイムでは太郎平小屋から2時間ほど。太郎山に寄ったとはいえ、ちょうど2時間ほどで2570mピークに着こうとしていたので、完全に見誤ってしまいました。
しかし山頂に着いてみると、その腰砕けを帳消しにする景色が待ってました。広々とした台地の向こうには雲ノ平の奥に鎮座する黒部源流域の山々と昨日登った薬師岳、そして一番圧巻だったのが、南側に連なる笠ヶ岳、乗鞍岳、御嶽山の並びです。笠ヶ岳はいつも東側からしか見てなかったので壁のような印象でいたのですが、北側から見たそれはすそ野も広くとても雄大でした。そして奥に乗鞍岳、御嶽山と、どでかい独立峰が並ぶ姿はあまり他では見られない光景です。
北ノ俣岳(8:54)~黒部五郎の肩(12:35)
いつまでも眺めていたい360度パノラマですが、まだ今日の行程の序盤中の序盤…。ただでさえ遅れているので、今日の本丸 黒部五郎岳へ向けていざ出発。まだ標準タイムで3時間ほどかかります。目標としていた”遅くとも11時には黒部五郎岳”はとても厳しそう…。
北ノ俣岳から赤木岳、中俣乗越を経て、黒部五郎岳へ登る手前の鞍部までは緩やかな上り下りをダラダラ続けます。左手の薬師岳は大きいし、後の北ノ俣岳はなだらか過ぎて特徴もないため、正直、歩いても歩いてもあまり変化はなく、正面に見える黒部五郎岳に向けてもさほど標高が上がって行かないので、近づいている感じもなく…体力的には問題ないのですが、精神的にはかなり辛い区間でした。
そしていよいよ登りに差し掛かると、山頂まで標高差300mを一気に登るわけで、「300mってこんなにあったっけ?東京タワー1本分でしょ?(頻繁に東京タワーを眺めているわけではないが…)」と自問自答するのです。結果、とても1時間後に登り切っているイメージも描けず、ただひたすら、延々と見えるつづら折りを一つずつこなしていくわけです。追い越していった人があっと言う間に高いところに行ってしまうのを見て「あぁ、場所交換してくれぇ~」と情けないことを呟きながら登りました。
で、なんだかんだで1時間かけて山頂から標高差60mほど手前の黒部五郎の肩に到着。今回のように西から登るとカールの外側を詰めていくことになるので、肩に着いた途端に突然その先が開けて、これまでずっと黒部五郎岳で隠れていた穂高連峰が顔を出します!!これまた登りの苦難が吹っ飛びます!!今までは槍ヶ岳だけでしたが、槍・穂高のセットになると”おどろおどろしさ”がぐっと増して、やっぱり北アルプスは素晴らしいな、と大満足するわけです。
黒部五郎の肩(12:40)~黒部五郎岳(12:50)~黒部五郎小舎(15:20)
荷物をデポして山頂へ。身軽なせいか、絶景への期待のせいか、わずか10分程度到着。ここも360度パノラマが拡がるのですが、やはり北ノ俣岳との違いは、槍・穂高連峰がぐっと迫って来るところ。双六岳西面の紅葉と、槍・穂高の岩壁が対照的でより強烈に見えます。
ただ、まだまだ今日たどり着かなければならない三俣山荘は見えず、ずっと山の向こうと思うと、気が遠くもなりました。今日のエスケープは、”三俣蓮華岳には登らず巻き道を進む”と、もっとダメなら”黒部五郎小舎のテント場でのビバーク”(後で判ったのですが、小屋の人は片づけ作業をしていて、言えばテント場OKだったようです…)。「もうビバークでいいや…、いや、それでは(明日の行程が膨らみ)雲ノ平でゆっくりできなくなる」と葛藤しつつまずは黒部五郎小舎を目指します。もちろんこの時点で、三俣蓮華岳への登頂は諦めました。まぁまた双六岳側から歩く機会はあるから今日は良いか…と。
カール内は数は少ないものの、キレイに色づいていました。羊背岩と呼ばれる岩が散らばっていて、ハイマツとも混ざり合ってさながら日本庭園の壮大版(なんだ、それ?)のような美しい場所でした。
肩から1時間ほど下ってきて、ちょうど特徴的なカール風景が終わりそうな辺り(雷岩ら辺?)で名残惜しんで小休止。このあたりで時間も時間だけに前後誰もいなくなりました。心の支えは先ほどすれ違った「今日は折立まで下る」と言っていた3人組グループよりは「マシだ」と思えること。何せ折立までというと普通に歩いたらまだ8時間かかるんだから、折立着は21時にもなる。もっと早く歩けるのかもしれませんが、それでも、自分の方がまだ「マシ」なはず。まぁでも、自分より苦境な人を見て自分はまだ頑張れる…なんて考え方、今思えば我ながら卑劣だな、と思います…。けどこの時は背に腹は代えられないので、甘んじて受けることにします。
そんな支えもあってようやく黒部五郎小舎に着くころには随分と陽が傾いていて、日没確定だな、と諦めも入ってきて小屋前にて小休止。ここも平たく広がる草原の向こうに薬師岳が見えたり、テント場からは笠ヶ岳が目の前だったり、とここもとても良いところ。秘境感があります。が、今日の寝床はここではない!!
黒部五郎小舎(15:44)~三俣蓮華岳キャンプ場(18:44)
黒部五郎小舎で少し長めの休憩とエネルギーチャージ。なぜなら小屋からすぐに意外なほどの急登が待っているからなのです。三俣蓮華岳には登頂せず、巻き道を進むので「もうそんなに登らないでしょー」と思いきや、巻き道分岐まで300m登らないといけないのです。今までの道と一変して樹林帯の中をなかなかの登りが続きます。景色も見えず、疲労もピークなので、もう何も考える余裕もなく、”無”の境地です。対岸に見える雲ノ平で今頃悠々とお茶しているだろう人たちのことを思うと「あそことこっちとでは雲泥の差」です。ここで3組くらいの人らとすれ違いました。皆さん、黒部五郎小舎でテント泊なんだそう。いいなぁ。ボクも戻って泊まろうかな、いやそうするとまたここまで登ってこないといけない…などと引くにも引けなくなり、トボトボ進むのです。
そして悲劇は続きます。巻き道分岐に着いたら後は平たんな道…と思いきや、どう考えてもこの先、平たんで行ける感じがしない。そして案の定、70m位の直登が待ってました。地図で見る70mは”平たん”のうちと思い、目前に迫る実際の坂道は”急登”と思ってしまうあたり、疲労がにじみ出ていたな、と思います。急登手前で日没。急登を登り終えて眼下に三俣山荘が見えたころにはもう真っ暗でした…。
まぁでも無事に最長行程を歩ききったので、ご褒美に三ツ矢サイダーを頂きました。