2021秋の逃避行 ~雲ノ平周回 Day.3 鷲羽岳・水晶岳~
少し長めのお休みが確保できたので、長年計画してきた「雲ノ平周回」を実行してきました!!
折立~薬師岳~黒部五郎岳~鷲羽岳~水晶岳~雲ノ平をめぐって折立に戻る、総延長55km、累積標高差4,770mにも及ぶ、3泊4日の山旅であります♪
今回はその3日目、三俣蓮華岳キャンプ場~鷲羽岳~水晶岳~雲ノ平キャンプ場をご紹介します。今回は絶景ばかりのせいか、画像多めです。
三俣蓮華岳キャンプ場(5:30)~鷲羽岳(7:48)
3日目はワリモ北分岐から水晶岳のピストンという全行程の半分くらいは空身で歩ける、しかもお目当てとしている鷲羽岳へは2時間弱の予定なので、出だしからなんだか心に余裕を感じる。昨日の13時間を歩き切った自信から来るのかもしれないし、ここまで来たらもう(折立に)戻るしかないという最深部まで来てるという諦めからなのかもしれない。
今日も朝からお天気良好。ありがたい。
三俣山荘の裏手に回ると正面に鷲羽岳がそびえ、一見近そうに見えるけども標高450m続くひたすらな登り。朝イチでなければへこたれそうな山道ですけど”どんと来いっ!”です。すぐに伊藤新道との分岐が現れます。三俣山荘にゆっくり滞在する機会にはぜひ行ってみたいルートなので”次回にお預け”です。
鷲羽岳への登りはホントにたんたんです。つづら折りな道をひたすらに詰めていきます。周りの景色もそれに合わせてだんだんと拡がってきて、まさに黒部源流域の展望台です。ちらっと右下に鷲羽池が見渡せるようになると間もなく山頂です。
朝方の斜光でちょっともやっとしていましたが、それでも楽しみにしていた鷲羽池越しに岩の槍ヶ岳!!手前にまったく緑のない硫黄尾根と、逆に緑と紅葉でモリモリした樅沢岳につながる尾根。変化にとんだ景色は日本のものとは思えません。そして北鎌尾根を眺めているとやはり加藤文太郎(『孤高の人』より)に思いを馳せてしまいます。う~む。至福の時です…。
鷲羽岳(8:22)~ワリモ北分岐~水晶岳(10:47)
いきなりの絶景に後ろ髪をひかれる思いですが、今日は水晶岳にもいきたい(今日行っておかないと次来た時に困る)し、そもそも早めに雲ノ平へついてまったりしたいので、いざ出発。目の前にそびえるワリモ岳の向こうに分岐はすぐそこ、そこまで歩けば空身になれる♪という一心で歩を進めます。ワリモ岳は山頂直下を素通りしていく感じになっているので、標識あたりに荷物をデポして脇の岩をよじ登ると山頂。これから向かう水晶岳が随分遠くに見えます。
程なくしてワリモ北分岐に到着。荷物をデポして水晶岳をピストンします。ワリモ北分岐から水晶小屋までは標高差100m、水晶小屋から水晶岳までは標高差50mありますが、空身のせいか、ほとんど平地のように軽やかに歩けます。2kmほど続く稜線は西に黒部五郎岳、東に野口五郎岳を眺めながら正面の水晶岳を目指してグングンその差を縮めていきます。野口五郎岳の奥には燕岳や大天井岳、常念岳などが連なり、”紅葉前線は今ココ!!”と言わんばかりに色が分かれていました。水晶岳手前で若干の岩場があり、この4日間では一番危険個所(けっつまずくと谷底に転がっていきかねない…)ではありますが、まぁ北アルプスにあってこれくらいは当たり前…な程度で、つまづきに注意すれば難なく通過できました。そして最後の岩をよじよじ登ると水晶岳山頂です。
山頂は狭く、おっさんが標識の隣でふんぞり返っているので皆さん写真を撮るのに迷惑されていました。なので先に昼食を済ませて空いた隙にパチリしたのが下の写真。この位置で撮るにはおっさんがふんぞり返っていたその場所からくらいしか撮れないほどの狭さです。
北側には赤牛岳へと続く読売新道の向こうに黒部ダムのアーチも見え、立山もかなり目前に迫ってます。そして何よりここも、来た道を振り返ると鷲羽岳から続く登山道の向こうに槍・穂高連峰が壮観です。
水晶岳(11:20)~祖父岳(13:44)~雲ノ平キャンプ場(15:15)
昼前にして最高到達点を出発。すこぶる順調。あとは雲ノ平へ下るのみ!!ワリモ北分岐に向けてはまさしく裏銀座コースの一部で、ひたすら槍ヶ岳を眺めながらの遊歩道です。今日はもう目的をほぼ達したので、存分に立ち止まってはこの景色の中に溶け込めることに感謝し、「ザ・北アルプス」を満喫するのです。
帰りに水晶小屋にも寄りましたが既に今シーズンの営業は終了。なぜかここだけは下調べし忘れており、水晶岳のバッヂを買いそびれてしまいました…そういえば三俣山荘にあったな…残念。
ワリモ北分岐に戻ってきて再び荷物を背負うと月から帰ってきたばかりのごとく、全身にずっしり重みが加わり、「う~~ん、重い…」。あとは下るだけ…と言いつつ、目前にそびえるわずか30mほどしか違わない祖父岳山頂が随分と遠く感じます。ここからは80mほど下の岩苔乗越までいっきに下り、50m昇り返してまた30m下って最後に80m登るという、意外にアップダウンがあるのです。あぁ、ここからまっすぐつり橋でもかけてくれればいいのに…(いや、でも、そんな高く長いつり橋、怖くて渡れないわ…)としょうもないことを考え、岩苔乗越へ下りました。
あとはひたすら「これこそほんとに今日最後の登り…」と自分を励ましつつ、50m登った先に現れた登山道に腰砕けにもなりながら、4日間で最後の頂、祖父岳山頂に到着しました。すると、ただの通過点だと思っていた場所に、(個人的には)4日間で一番の絶景が待ってました!!
祖父岳山頂は標識も色あせて読み取れず、蓼科山のように広々していて山頂というより丘の上のような場所ですが、周りを北アルプスの山々に囲まれた、まさに秘境中の展望台。ヒト気もなく、なんか目の前に広がる景色があたかも美術館にある絵と錯覚してしまうような、無心ってこういうことかもな、と言うような気分でしばし言葉を失ってしまいました。雲が沸いて槍・穂高連峰が隠れかけてようやく諦めがつき、雲ノ平へ下る決心がついたほどです。うまく言い表せませんが、今までの山旅をひっくるめても1、2を争う圧巻の景色でした。
今度こそは下るのみ。雲ノ平で3日ぶりのちゃんとしたお食事(多分、名物石狩鍋!!)にありつけるということで、腹をしっかりへらしつつ山荘へ向かいます。
祖父岳を下ったあたりから木道が整備されペースが上がります。雲ノ平キャンプ場から雲ノ平山荘までは25分ほどかかるので、できれば祖父庭園からまっすぐキャンプ場に下りたかったのですが、自然保護のため現在は通行禁止でしたのでぐるっと回って15:15にキャンプ場に到着。先にテントを設営し、受付と晩ご飯のために山荘へ向かいました。
山荘についたのは確か16時ちょいすぎ。食事は予約要とは書いてなかったので予約せずに向かい、この時間なら十分OKな時間…と思って受付で「(キャンプ1人分と)あと夕朝食だけを」と伝えました。が、この日の宿泊人数では1回で済まそうとされていたらしく、OKの即答はもらえず不穏な空気に…。「えっ!!こんなに楽しみにしてきたのに食べれないの!?」と背筋が凍りそうになりましたが「なんとか1席なら…」と滑り込みセーフ。絶対に外したくない場合は予約した方が間違いないな、と思いました。
晩ご飯はここでは定番の乾物と石狩鍋。ちょっと冷えたこの時期、疲れた身体と枯れた喉にとてもやさしいメニューです。ご飯を小屋食にするだけでこんなに生きた心地になれるのかと思いました。皆がほっこり食後の会話を楽しむ中、一人また寒い真っ暗な木道を25分戻って自分の寝床へ。せっかくのほっこりが少し冷めてしまいました。今晩くらいは山小屋泊にしてもよかったかな、と後悔。明朝また、朝ご飯を食べに25分歩きます…。